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2023年2月20日

Eコマースにおけるサステナブルなパッケージングへの3つの道筋

Eコマース企業には現在、無駄なパッケージや使い捨てパッケージの使用を制限するよう、社会的にも法律的にもますます圧力が高まっています。持続可能なサプライチェーンネットワークのための、サステナブルなパッケージソリューションとは。業界で広がりつつあるパッケージングに関するサステナブルな取り組みをご紹介します。

Eコマースの世界的な急増で広がった、段ボールなどの梱包資材の世界的な不足への取り組み

1957 年、バレンシアのトゥリア川の堤防が決壊し60 人が亡くなりました。これは都市のほぼ 4 分の 3 を覆う壊滅的な洪水でした。川を都市の周りに迂回させるという大胆な対策はすぐに行われました。しかし、大変だったのは、次に何をするかを選択することでした。河川敷の上に広大な高速道路網を建設するという自治体の当初の計画に対し住民は反対し、持続可能な解決策を要求しました。これによりこの歴史的な街の中心部を通る、5マイルの緑豊かな公共スペース トゥリア庭園 が1986にオープンしました。

ところで、この話はサステナブルなパッケージとどのような関係があるのでしょうか。トゥリア川の物語は、危機を解決する方法と人々を持続可能な解決策の中心に据えることの重要性についての教訓となります。川を迂回させることで当面の問題は解決しましたが、それだけではなく人々の声に耳を傾けることで、勇気ある長期的な解決策が生まれました。それはビジネスにおいても変わりません。お客様の声に耳を傾けることで、今日の課題を克服するだけでなく、Eコマースの世界でより環境に優しいソリューションを生み出すために、新しくサステナブルなソリューションを発展させることができるのです。

現在の標準パッケージは、サステナブルですか?

需要に追いつく

新型コロナウイルス感染拡大以前よりも現在のほうが、あらゆるものを入手するのが難しくなっているように見えます。商品を梱包するための資材も例外ではありません。理由のひとつは、Eコマースの急増です。国連の調査 によると、一般消費者向けEコマース企業の上位13社は、2019年の2.9兆ドルから2021年には3.9兆ドル(3.6兆ユーロ)へ売上を伸ばしたことが分かりました。

Eコマースの急激な増加は、前例のない労働力不足(需要に対処する人員の減少)と相まって、いくつかの面で業界の負担となっています。特に段ボールを見ると、需要な大幅な増加により、英国のサプライヤーは2022年2月に、12か月前よりも紙のパッケージに1トンあたり 最大で 200ポンド ($250) 多く支払っていました。

また、他の資材不足とは異なり、段ボールの不足は広範囲に及ぶ負の連鎖をもたらし、サプライヤーが予定通りにリードタイムを達成することに影響を与えます。梱包材の不足が続く場合、Eコマース企業は出荷を遅らせなければならない事態になる可能性もあります。

この問題は、世界の多くの地域でしばらく水面下にありましたが、現在では地球規模で認められています。そしてこの不足はパズルの1ピースにすぎません。企業は、社会的にも法律的にも、無駄なパッケージや使い捨てパッケージの使用を制限するよう、ますます圧力を受けています。しかし、持続不可能な取り組みによって引き起こされた混乱の洪水に直面している私たちは、バレンシアの市民が洪水によって荒廃した都市を立て直したように、大胆で実用的で人々を重視した解決策を要求し、実行することはできるのでしょうか。

サステナブルなパッケージソリューション: 未来への3つの道筋

ひとつ確かなことは、持続可能なパッケージ ソリューションへの需要は強く、私たちは実現の途上にいるということです。不確かなのは、将来どのようなソリューションがロジスティクスにおいて最も有効な役割を果たすかということです。私たちは、より環境に優しい包装への移行において重要なファクターになるであろう、よりサステナブルなパッケージの実現への 3 つの道筋を注視しています。

1.使い捨て段ボールやプラスチック容器包装に代わるまったく新しい代替ソリューション

2.廃棄物を削減し、既存のリソースを最大限に活用するための人口知能 (AI) およびデジタル技術の進歩

3.考え方を変え サステナビリティをビジネスの中心に据える

以下に、持続可能なパッケージング ソリューションの 3 つの例を詳しく見て、それらがどのようなものか、そしてなぜ業界全体で広く取り入れられる可能性があるのかを示します。

1. 箱の再発明 – まったく新しいサステナブルなパッケージコンセプト

多くの企業は、オンライン ビジネスが再利用可能なパッケージで出荷できるようにすでに取り組んでいます。この分野の大手企業には、ReZip、Returnity、RePack、Paua、そして最近ではBooxなどがあります。再利用可能な箱は、循環型経済をもたらします。

お客様の都合に合わせて梱包材を返却できるオプションにより、配達が以前ほど無駄になることがなくなりました。(循環型)パッケージング エコノミーの背後にあるコンセプトは、無駄な要素を排除した設計をし、製品と材料をできるだけ長く使用し続けることです。

もちろん、持続可能なパッケージの返品ネットワークを構築することは、使用する企業にとって魅力的であり、顧客にとって便利であり、そのネットワーク自体が持続可能でなければなりません。これは、企業やサプライ チェーンを管理する者に新たな一連の課題をもたらします。しかし、返品率や返品インフラなどの初期設定のハードルを克服し、技術的な統合の必要性を排除した ReZip の成功例は、近い将来循環型パッケージの広がりの方向性を見せました。

2. AIの活用 – テクノロジーを使用してリソースを節約

段ボールが不足しているため、サプライ チェーンに携わる関係者の間では、段ボールは「ベージュ・ゴールド(金の段ボール)」と呼ばれるようになりました。しかし、E コマースの商品を梱包するために使用される段ボールの多くは、実際には無駄になっています。例えば、私たちの調査ではパッケージの容積の24%は空スペースであることが判明しました。また、不要な出荷スペースの最大50%を占めています。言い換えれば、無駄な段ボールのパッケージが輸送スペースを占有する分、商品を配送するためトラックやコンテナにより多くのスペースが必要となるのです。そしてその分、送料が高くなります。

これが、OptiCartonを開発したひとつの理由です。この AI を活用したソリューションは、段ボールの使用方法を変革し、必要な段ボールの量を削減するのに役立ちます。OptiCarton はアルゴリズムを使用して、各出荷に必要なパッケージの寸法と保護材を決定します。コストと二酸化炭素排出量を削減できると判断される場合は、注文を複数に分割することも提案できます。

これは廃棄を最小限に抑え、出荷効率を高め、A 地点から B地点 への (多くの場合、非常に長い) 移動中に商品が損傷しないようにすることに直接的な影響を与えます。

先を見越した解決策は、遡及的な解決策よりも常に望ましいものであり、OptiCarton 導入の初期見積もりがこれを裏付けています。段ボールの使用量を削減し、環境効率を高めることのほか、配送コストを最大 35% 節約できるように設定されています。

3. 習慣を変える – 考え方を見直すイニシアチブ

いったいどれぐらいの段ボールが無駄になっているのか?

業界では刺激的な多くの開発に取り組んでいますが、サステナブルなパッケージソリューションを効果的にするために、ハイテクで高価である必要はありません。また、小規模な E コマース 事業者には、大規模なソリューションへの投資をするほどのリソースや需要がないことがよくあります。

ひとつ、企業ができる最も効果的で費用対効果の高いこととして、既存の慣行を適応させて持続可能性を促進し、使い捨てパッケージの過剰使用に注意を向けることがあります。たとえば、注文を ひと つの配送にまとめるオプションを顧客に提供することは、近年、中小事業者の間でポピュラーになっています。

事業者は、特にミレニアル世代と Z 世代の間で、よりサステナブルなソリューションを求める消費者の声に応えています。多くのオンラインショッピング消費者は、環境への影響を減らすのであれば、配達時間がわずかに長くなっても気にしません。

一部の企業では、顧客に使用済みの段ボール箱で発送する選択肢を提示しているところもあります。これにより、顧客は環境に配慮した買い物をする機会が得られるだけでなく、個々の出荷によって発生する廃棄物の量が少なくとも 50% 削減されます。

その他の差し迫った変化は、段ボールの価値に対する私たちの見方を変えるのに役立ちます。たとえば、パッケージの小さな取り組みが大きな変化を引き起こしています。持続可能な代替材料を取り入れてパッケージデザインを刷新する国レベルのイニシアチブは一般的になっています。 ここで、雪だるま式の効果が期待できます。パッケージの小さな変更がロジスティクス全体で受け入れられるようになると、これらの変化が急速に広がり、さらに発展していくでしょう。

ビジネス習慣の変化と同様に、人々が新しいプロセスに適応することは、ときに痛みが伴います。しかし、より多くの Eコマース ビジネスがサステナブルな商習慣に対する消費者ニーズの高まりに対応するにつれて、初期のハードルを克服し、新しいソリューションを取り入れて実現し、最終的には顧客と企業の双方にバリューをもたらすのです。

スマートでサステナブルな(パッケージ)スペースを作りましょう

マッキンゼーは2020年のレポートで、サステナブルな非段ボールのパッケージソリューションについて、"困難だが実現可能"と述べています。段ボールへの過度の依存から抜け出すのは簡単ではありません。 しかしサステナブルなパッケージへ、代替品の革新的なアイデアを持っている人は多くいます。これらの人々は、川の流れを変えるだけでは危機を解決できないこと、そして古い解決策に代わる新たな解決策が必要であることを知っています。より多くの人々と企業が、新しいサステナブルなパッケージソリューションを採用すれば、物流とサプライ チェーンは、これまで以上に価値ある再利用可能なリソースになります。

多くの人にとって、川全体を公共の公園に置き換えることは難しいことのように聞こえるかもしれませんが、今、永続的な変化に向けて勇気を持って一歩を踏み出せば、人々は、私たちが次世代のために創り上げた環境に優しい 空間(パッケージ)から恩恵を受けるでしょう。

この記事は、Logistics of Things より引用しました。

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