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2023年9月21日

中国向け越境EC:消費者動向や成功の秘訣を解説

中国への参入をご検討ですか?デジタル化とその購買力の成長に後押しされた中国市場は、今や世界一のEC大国となり、日本からの参入企業も年々増えています。中国消費者動向から通関手続きまで、中国でのビジネス拡大に役立つヒントをご紹介します。

中国への輸出:市場概要

中国は世界ナンバー1を誇る貿易大国です*。DHL Trade Growth Atlas に よると、2016年から2021年にわたる世界貿易の成長の4分の1を中国が創出しています。

出典:*UNCTAD – Statistics

また、中国におけるEC普及率は、2002年の42.9%から2021年には79.2%と、過去10年間で急速な成長をみせています。中国市場に参入する海外企業にとって、中国が重要な市場となっていることは間違いありません。

中国の輸入概況

中国の消費者はどの国の製品を越境ECサイトを通して最も多く購入しているでしょうか?商品の原産地別分布グラフを見ると、興味深い結果が出ています。(出典:2021年1月現在 Statista2

日本や韓国のように質の高い商材を製造する近隣諸国にとって、中国は売上拡大が期待できる大変魅力的な市場となっています。

では、中国のバイヤーは日本からどのような商品を輸入しているのでしょうか?調査によると、安全性と高品質で信頼度が高い、ベビーケア商品、化粧品、パーソナルケア製品などが、特に中国の消費者からの人気が高まっています。

また、中国は2021年には、日本のウイスキー、日本酒、ホタテ、牛肉、農産物などの食品の輸出国としてトップの座を獲得しています。あわせて電子機器のような日本の消費者向けの商材も、隣国市場からの高い需要が続いています。

中国への輸出:中国市場を理解する

新しい国際市場への販売を成功させるには、その国の消費者の購買行動や嗜好を理解する必要があります。中国では、生まれながらにしてデジタルネイティブであるZ世代の消費者を意識した販売・マーケティング戦略の構築が重要です。

これから中国でビジネスを展開しようと考えている企業は、中国で今後の消費における主要層となる10代後半から30代前半の消費者の動向や、デジタルトレンドを把握し、対策を立てていくことが成功のカギとなります。

以下は中国の消費者が越境ECサイトで購入している商材の割合です。(出典: Ministry of Commerce of the People’s Republic of China3

モバイルコマース

中国は第5世代移動通信システム(5G)が政府主導で急速に普及しており、世界最大のモバイルファーストの国といっても過言ではありません。中国における電子商取引の64%はモバイルデバイス4が使用されており、おもに淘宝網(Taobao/タオバオ)やWeChat(ウィーチャット)などの「スーパーアプリ」を通じて、日常生活のあらゆる場面において、単一のプラットフォーム上ですべての取引を行うことができます。

中国越境EC市場に参入し、モバイルユーザーをターゲットとする海外企業は、その方法にはいくつかの選択肢があります。天猫(Tmall)や京東(JD.com/ジンドン)、淘宝網(Taobao/タオバオ)など、中国で既に人気の高いECモールに出店する方法や、中国最大級のメッセンジャーアプリ「WeChat」内の「WeChatミニプログラム」という機能を利用して出店するなどが主流ですが、条件やメリット/デメリットを検討しながら最適の方法を選ぶことをお奨めします。

オンライン・マーケットプレイス

中国の消費者は、天猫(Tmall) ※アリババグループ、京東(JD.com)、拼多多(pinduoduo.com)、蘇寧易講(Suning)、唯品会(Vip.com)のような、商品を閲覧したり比較したりできるオンライン・マーケットプレイスを頻繁に利用しています。

しかしながら、これらのECサイトで販売するためには、販売者は中国本土内で登録されている必要があるなど、厳しい出店条件をクリアする必要があるため、外国企業は、Tmallが開設したTmall Globalという越境EC専用サイトで販売展開をするという選択肢があります。

この場合、外国企業であっても中国に物理的な事業所を持つ必要も、中国のビジネスライセンスも必要なく、中国以外の国の通貨での支払いも可能となります。オンライン・マーケットプレイスへの出店については、その長所と短所、最新の出店条件を事前に十分に把握しておく必要があります。( こちらの記事でご紹介しています)

カスタマーサービス

“Guanxi” 「Guanxi」(关系、グワンシー「関係、人脈」の意)は、信頼に基づくコネや人脈作りを表す中国に古来からある商習慣です。この概念は、中国の消費者が卓越したカスタマーサービス、つまりパーソナライゼーションや迅速で信頼性の高い配送、ストレスのないショッピング体験などを最優先事項として期待していることにも通じています。また、消費者による商品レビューは中国人バイヤーの意思決定において重要な役割を果たすため、消費者には優れた顧客体験の提供を心掛ける必要があります。

価値と品質

中国の消費者は価格に敏感で、お買い得品やクーポン、割引に注力する傾向にあるため、一般的に海外ブランドは、中国国内ブランドと比べて価格や品揃えの面でビジネスに苦戦するケースが見受けられます。

しかしながら、日本のブランドは、品質の高さに定評があり、中国の消費者を魅了することができるという強みがあります。模倣品は中国消費者に不信感を与えるため、高品質で、信頼できる本物の商品・ブランドであることをアピールすれば、中国の消費者のニーズにまさに応えられることになります。

ソーシャルコマース

中国ではソーシャルメディアとEコマースは密接な関係にあります。人気の動画プラットフォームであるDouyin(ドウイン/中国版TikTok)では、ユーザーはライブストリーマー(自分自身を撮影し、動画をライブ配信する人)から商品を購入します。しかし残念ながら海外の企業がDouyinのアカウントを開設するには、中国本土に拠点が必要となります。

では、より簡単なルートで中国市場参入の方法はあるのでしょうか。例えば、中国で最も人気のあるメッセンジャーアプリ「WeChat」を利用する方法も一つです。月間のアクティブユーザー数5aはなんと12億4,000万人にものぼり、そのユーザーは1日平均2時間をWeChatに費やしていると言われています5b。WeChat にはミニプログラムという、WeChatのアプリ内で起動するダウンロード不要のアプリが存在し、ニュース配信やチケット予約、タクシー手配など多種多様なコンテンツが提供されているのが特徴です。EC機能を持つミニプログラムを活用すれば、WeChat内で商品を販売することが可能になるのです。また、このアプリにはWeChat Payという決済サービスが組み込まれており、シームレスで便利な決済が可能となります。

ライブストリーミング

「ライブコマース=ライブ配信でモノ・コトを売る」という新たな潮流が、中国を中心に広がっています。ライブコマースとは、ECサイトとライブ配信を融合させた新しい対面型のコミュニケーションツールで、視聴者は芸能人やインフルエンサーによる商品紹介のライブ配信動画を見ながら気になる商品を購入できます。中国では数年前からこのライブコマースが、Eコマースの主流となり、インフルエンサーやKOL(キー・オピニオン・リーダー)、Wanghong(网红、「ネット上の有名人」の意)を起用し販売をおこなっている企業が増えています。

配信者と視聴者の間でライブなやりとりが発生するため、実店舗で買い物をするような疑似体験ができ、さらに、多くのフォロワーを持つ人気のある有名タレントや、インフルエンサーがライブ配信するにことによって、商品に興味を持ちにくい潜在層の獲得が期待できると言われています。ライブコマースは新しい商品販売戦略のひとつであり、今後より一層ライブコマース導入を検討する企業が増えることが予想できることからも、新しいビジネスチャンスの創出にもつながる可能性を秘めています。

中国のEC商戦期:大型ECイベント&セール

欧米のアマゾンプライムデーのように、中国でも大型ECセールが開催されており、記録的な売上が出ています。最も人気があるのは、シングルデー(11月11日)と618ショッピングフェスティバル(6月18日)です。数週間前からリサーチや分析を行い、マーケティング戦略を練り、この絶好のビジネスチャンスを逃さないよう備えるに越したことはありません。

デジタルウォレット

中国のモバイル決済においては、支付宝(アリペイ)と微信支付(ウィーチャットペイ)が取引の最大シェアを占めています6。オンラインショッピングの利用者は、チェックアウト時に希望する支払い方法がオプションとして表示されている場合、購入を確定する可能性が70%と選択肢が無い場合より高くなると言われています7

中国の主要な大型ECセール

中国への輸出の課題

⽇本、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、ASEAN10カ国、の15カ国が参加する「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」が2022年1月1日に発効されています。これは日本にとっては中国、韓国と初めての経済連携協定(EPA)となります。同協定は、電子商取引を含めた幅広い分野のルール整備を通じて、地域における貿易を強化するためのもので、協定により特恵関税の適用が受けやすくなるなどのメリットがあります。一方で、オンラインビジネスを中国で展開するにあたって、商品を中国へ輸出する際の課題がないわけではありません

DHLのエキスパートが中国への輸出や輸送について、実際に中国でビジネスをプランするために役立ついくつかの重要な戦略をご紹介します。

1. 中国の 通関と輸入手続きについて

• もともと中国国内への輸入に関わる通関手続きは厳しいと言われていましたが、コロナ禍でその規制は一層厳格となりました。荷送人は詳細な書類を提出しなければならず、特定の規制に従う必要があります。書類に不備や不足があると、出荷が滞る可能性も出てきます。

• 特に 食品、電子機器、医療機器など、特定の製品については、プロセスの遅延や罰金、あるいは貨物の差し押さえを避けるために遵守すべき特別な規制があります。

解決策

時間とリソースを最小限に抑えるには、通関手続きの経験と専門知識を持つロジスティクス・プロバイダーと協力し、貨物を迅速かつ効率的に通関できるようにすることが重要なポイントとなります。

例えばDHLのような国際エクスプレス・ロジスティクス企業とパートナーを組むことで、通関手続きに対する豊富な知識と世界規模での対応経験をベースとした質の高いサービスの提供を受けることができます。

2. 中国への送料

中国は国外から輸入される多くの製品に輸入税と関税を課しています。これに中国までの送料や輸入通関手数料が加わると、あっという間に商品にかかる費用が膨れ上がってしまいます。これでは、中国国内の販売者と、商品の価格競争をすることが難しくなる可能性があります。

解決策

戦略的に商品の価格設定を行うためには、事前にかかる全てのコストを把握しておくことはもちろん、送料や現地で発生する税金などの請求方法を明確にしておくことも重要です。DHLではウェブサイトで簡単に見積もりを取ることができます。輸送料金を事前に算出し、競争力のある価格戦略のご検討にお役立てください。

また、DHLの現地税金元払い請求(Duties & Taxes Paid)サービスでは、輸入関税、消費税、その他の配送料を荷物を受け取るお客様ではなく、荷送人となるお客様へ請求をすることが可能となります。販売者や購買者にとってより便利でシームレスな取引が可能になり、顧客満足度とロイヤルティの向上に貢献できます。

3. 中国市場向けウェブサイトの開設

残念ながら、越境ECサイトで中国の消費者に販売するには、ウェブサイトの言語を中国語に変更するだけでは不十分です。中国の検索エンジンの検索結果ページに表示されるには、中国でホスティングされたサイトが必要となります。これには、中国工業情報化省への登録や関連する商業ライセンスの取得など、いくつかの複雑なステップが必要で、準備をするだけで数ヶ月かかることもあります。

解決策:オンライン・マーケットプレイスでの販売

先に述べたように、中国の大手マーケットプレイスの中には、国際ブランドが販売するための専用の「姉妹」サイトがあり、中国国内に法人格や銀行口座を持つ必要なく活用することが出来ます。Tmall GlobalやJD Worldwideなどがそれにあたります。手数料、販売する商品の種類(例えば高級品を販売することに適しているプラットフォームなどもあります)、承認までの待ち時間などを考慮しながら、適切なサイトを選択し活用する方法もあります。

4. 迅速な配送

中国の消費者は、たとえ海外ブランドであっても迅速な配送を期待しています。国土の広さと規模の大きさに加え、農村部ではインフラが未整備であるため、国境を越えてビジネスを展開する事業者にとって、配送のスピードで中国の消費者のニーズを満たすことは難しい課題となります。

解決策:DHLとの提携

DHL Express のサービスは、集荷から輸出通関、フライト、輸入通関、配達までの輸送プロセスをすべて自社で行うドア・ツー・ドアの一貫輸送で、貨物の所在を常に把握できる追跡可能なサービスです。安全・確実・スピーディな輸送品質を実現することで、事業者が中国市場で迅速にビジネスを展開できるようお手伝いいたします。

市場参入戦略 :中国輸出のステップ

1. 市場調査の実施

日本の経済産業省によると、2021年の日本から中国への越境EC売上総額は約2兆1,000億円(現在のレートで160億米ドル)で、2020年から約10%増加しました8。また2022年には、日本から輸出された商品は中国の越境EC輸入総額の20%強を占めています9

しかし、中国の14億人の消費者すべてが越境ECブランドの見込み顧客になるとは限りません。年齢、予算、どのオンライン・マーケットプレイスで最も多く購入しているか、どのソーシャルメディア・プラットフォームと関わっているか、どのような支払い方法が好まれるかなど、ターゲットとする消費者の属性や特性を明確に把握する必要があります。マーケットセグメンテーションを効果的に行うことで、企業は顧客をより深く理解し、彼らのニーズや嗜好に共鳴する、より的を絞ったマーケティングキャンペーンを展開することができます。

2. 中国の消費者に適したコミュニケーション

例えば、会社名を中国語表記に変換することで、中国国内の消費者にアピールできるかもしれません。さらに、商品リスト、ソーシャルメディア・コンテンツ、カスタマーサービスの対応も中国語にすることが重要です。また、その際には必ずその言語を母国語とする専門家のアドバイスを受けることをお奨めします。オンライン翻訳に頼ると、表現が誤解を招く恐れがあるからです。また、購入者に対して現地通貨での支払いに対応していることをアピールすることも重要ポイントとなります。

3. 適切な市場参入戦略を選択する

多くの国際的な中小企業やEコマースの新興企業にとって、越境ECで中国へ参入することは魅力的です。ECプラットフォームが持つ膨大な顧客データベース、現地の知識、また既存のフルフィルメントサービスの提供を受けることができるからです。もちろん手数料はかかりますが、管理業務にかかる時間を節約できるため、それを補って余りあるメリットとなります。

4. 独自のセールスポイントを知る

中国の消費者が特に高級品を購入する際には、その多くが、他とは違うものを求めていることを忘れてはなりません。

過去の販売データや顧客からのフィードバックをヒントにしながら、消費者が何故その商品を購入したのかを把握し、販売を促進していくことが大切です。

5. サプライチェーンの計画を立てる

中国政府は最近、中国への物流をより円滑にするための政策を実施しています3。特に、Covid-19の大流行以来、消費を促進するためにこれらの制度は全国的に展開されており、日本の売り手にとって中国市場参入の好機となっています。

また、最近では、中国のEコマース新興企業である大連万中源( Dalian Wanzhongyuncang) が、実際の商品を消費者が手に取ることができるように、2023年に巨大な実店舗をオープンしました。日本製品と韓国製品だけで商品全体の40%を占め、食品や化粧品を含むおよそ800種類の日本製品が販売されています。このような記事をみても、中国市場でいかに日本製品が興味を持たれているかが垣間見えます。

DHL Expressは、こういった背景を受け中国市場への参入を検討される事業者や、すでにビジネスを展開しさらなる成長を目指している企業が、スムーズに越境ECを展開できるようお手伝いします。効率的なロジスティクスを実現するには、国際的なロジスティクスリーダーとの提携に勝る解決策はありません。DHLは、220以上の国と地域に拠点を持ち、国際輸送を熟知しています。中国でのビジネス展開をお考えの際は、国際物流を支えるパートナーとして、DHL Express にご相談ください。

この記事は、DHL Discoverのオリジナル記事より転載されたものになります



参照

1 – Statista, April 2023

2 – Statista, July 2022

3 – Mitsui & Co., November 2021

4 – J.P. Morgan, 2021

5a & 5b – Shopify, December 2022

6 – Statista, July 2022

7 – Verifone, June 2020

8 - Nikkei Asia

9 - iChongQing

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